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たばこ税で集めたお金は、防衛費を含む政府支出の一般財源に入る。その税収の一部は、加熱式たばこの購入時に発生する。都市では、企業や自治体が整備した加熱式専用の喫煙所が増え、そこでの日常的な一服が継続的な税収を生む。税収の編入と、喫煙の場としての装置化された空間と、個人の行動がどのようにつながっているのかを見ていく。
たばこ税収と喫煙による社会的費用を金額だけで並べると、「だいたい釣り合っている」と感じられやすい。2023年度のたばこ税収は2兆1,542億円とされ、国と地方の一般財源として予算に組み込まれている。(Source: 財務省・総務省, 2023) 一方で、喫煙に伴う社会的費用は、医療費・介護費・火災関連費などに限られた推計で2015年に約1.8兆円とされる。(Source: 厚生労働省研究班, 2015)
生産性損失や早死による損失の統計的価値などは含まれておらず、年次や前提も異なる。税収は喫煙者が購入のたびに一方向に集まるが、社会的費用は保険料・公費・企業負担・家計の自己負担として時間と場をまたいで分散する。このように会計単位が異なるにもかかわらず、数字の近さだけが前景化すると、公平感だけが先に立ち、負担の構造は背景に退きやすくなる。

加熱式たばこをめぐる制度と市場の接続は、評価の前提と実際の使われ方のずれとして現れる。米国の規制当局であるFDAは、紙巻からの完全な切り替えを前提に、有害物質への曝露を減らすという表示だけを認め、リスク低減の表示は認めないかたちで健康影響を評価している。(Source: FDA, 2020) 一方で、日本の市場では、加熱式たばこを使う人のうち68.2%が紙巻と併用するデュアル使用のパターンにあり、この層は非喫煙者や紙巻のみ、加熱式のみと比べて循環器や呼吸器の指標が最も悪いと報告されている。(Source: JASTIS, 2023; Nature Scientific Reports, 2025)
企業は、本体価格を抑え専用スティックの継続購入で利益を得るレイザー&ブレード方式で市場を組み立て、有害物質への曝露を減らすというハームリダクションの語が、この仕組みに正当性を与える。日本の税制では、2026年からの加熱式たばこへの課税見直しと2027〜2029年の国たばこ税率引き上げにより年2,000億円規模の増収を見込み、その税収が防衛力整備を含む政府支出の一般財源に流れ込む経路が設計されている。(Source: 財務省, 2023) 加熱式専用喫煙所の設置主体は企業に限らないが、街に点在するその空間での一服が継続的な購買を支え、そのたびに生じる税が防衛費も含む支出に組み込まれていく流れを重ねて見ると、装置・行動・税制が単一の財源経路で結ばれているように見える。

社会的費用と加熱式たばこの関係を、「煙が少ない」「マナーに配慮している」といった健康志向や社会的配慮のイメージだけで受け取ると、「少なくとも前よりは良くなっている」「社会全体では損得が釣り合っている」と感じられやすい。たばこ税収と社会的費用の金額が近いように見えることは、負担の主体や時間のずれ、推計に含まれていない外部費用の存在を意識させにくくし、「全体として妥当だ」という印象を支える。加熱式たばこについても、有害物質への曝露を減らすという言葉は、デュアル使用が多数派で健康リスクが集中している層の存在を、日常の感覚から切り離す方向に働きうる。都市の喫煙所という装置、たばこ税という財源、曝露低減の言葉、併用として続く行動が同じ構図の中で並ぶとき、その組み合わせ自体がひとつの像として静かに浮かび上がる。